2017年09月25日

速く走るには

 桐生選手が10秒の壁を破り9秒98の日本記録を樹立しました。これをきっかけに陸上のスプリントに注目が集まってきています。
 先日、ある高校で模擬講義をさせてもらいました。桐生選手の記録達成もあり「速く走るには」という内容でバイオメカニクスの講義を依頼されました。走速度を決めるのは、ストライドとピッチのかけ算ですので、これらを大きくすれば速くなるのですが簡単にはいきません。
100m走の場合、スタートからの加速区間、最高疾走区間、それから後半の減速区間の3つに分けて分析されます。最も良いのがスタートで大きく加速し、最高疾走区間での速度が高く、それを減速することなく最後まで維持することです。ですがこの理想は難しい。最高疾走区間で足が地面に接している時間は0.1秒もありません。0.1秒より短い時間で足が地面に作用させた前方へのブレーキ力と後方への推進力の差し引きが、加速、等速、減速を決めます。なので、接地しているときだけでなく足が空中にある間の動きも重要になってきます。もちろん、極めて短い時間で意識しないで実行できるようにするため、選手は繰り返しトレーニングすることになります。
このように丹念な技術トレーニングならびに身体トレーニングによってスプリント能力は向上します。ただし、人智の及ばない自然環境(天候、風など)の影響も無視できません。だからこそ目標達成された記録は宝のように貴重といえます。
posted by 忠 at 12:17| Comment(0) | 【Lakes Magazine】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月22日

【小さなことが大事】

毎年、国体の開催県にて、日本体力医学会が開催されています。今年の国体は愛媛県です。体力医学会は松山大学を会場にして9月初旬に開催されました。その特別講演として、元サッカー日本代表監督を務めた岡田武史さんが、「チームマネジメント 今治からの挑戦」をテーマに話をされました。
 
 岡田さんは、JFLのFC今治を管理運営している(株)今治.夢スポーツの代表取締役会長です。いわば、FC今治のオーナーです。今は現場でサッカーを教えることはほとんどないようですが、「岡田メソッド」というサッカーにおける基本的な原則(共通認識)をまとめたテキストを使って、今治の小学生から高校生までを鍛え上げ、その上に、トップチームとしてFC今治を据えて強化するという構想で、サッカークラブ全体をまとめておられます。サッカーには、型があり、型としての共通認識(岡田メソッド)を16歳まで徹底して叩き込み、それ以上の年齢になったら、自由にプレーさせる、という発想で、ピラミッド型のチーム強化進めておられます。

 今回のお話の中で印象に残ったのは、「勝負は細部に宿る」、「勝負の神様は細部に宿る」という言葉でした。日本代表を率いて世界と戦ってきたときに、勝利の女神がどちらのチームに微笑むのか、微笑んだのかということを客観的に整理したときに、戦術、戦略などの大きなシステムで勝利を逃すよりは、むしろ一人の選手のたったひとつの「これぐらいで良いだろう」といった緩んだプレーが、勝負を決めることが多いと分析されています。90分間、全力で、つねにワンプレーを大事にして、細部まで手を抜かないことが大事であることを、身にしみて感じてきたことを語られました。だから練習でグラウンドの周回走をするときに、各コーナーの少し内側を走る選手と、コーナーの外側をきちんと走る選手がいた場合、内側を走る選手は使えない。トレーニングとしてみた場合に大きな差にはならないが、「これぐらいで良いだろう」と考えての行動は、大事をきめるときにマイナスになる。いわば、モラルの問題であるとも指摘されました。

 「大事は小事から起こる」、という諺にもあるように、取るに足らない小さなこと、小さな油断が大事にいたることを、世界トップでしのぎを削ってきた指揮官が身をもって語っていただいた。大事を達成するために、押さえておくべき重要な考えです。
posted by 忠 at 16:49| Comment(0) | 男子陸上部☆部長コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

【少しの違いが大きな差を生む少しの違いが大きな差を生む】

 世界陸上のロンドン大会では、世界トップ選手たちによるハイレベルな競技を堪能することができました。より速く、より高く、より遠くへ、そしてより逞しく・スマートに、というのが印象です。

 より速くに関してみれば、100mが世界最速を決める戦いです。スタートからの反応良く飛び出し、加速、最高疾走を迎え、できるだけ減速を少なくゴールを駆け抜ける。あっという間の時間ですが、そのあっという間のわずかな時間を縮めるのに、圧倒的な時間を費やしてトレーニングを選手たちは積んでいます。

 スポーツ健康科学部の大恟赴ウらが、海外の学術誌に発表した研究(Frontiers in Psychology, 2017)によると、スターターのセットからピストルの合図までの時間(いわゆる、用意からドンまでの時間)によって、反応時間に差が出ることが明らかにされました。この時間は、スターターに任された時間ですが、通常1.5秒から2.5秒の範囲のようです。この時間が長い方が、反応時間が良いこと、かつ短い時間との差が0.04秒の違いを生じることを実験的に証明しました。

 100mスプリントにおいて、0.04秒は大きな違いです。ただ、現状ではスターター任せのことであり、何とも仕方がないところです。一方で、自らのスプリントのレースプランは各選手が立てます。今回の銀メダルを取ったリレーメンバーの一人から、スタートダッシュについて直接話しを聞いたことがあります。彼なりに、いくつかのダッシュの戦術があり、それを試しながら、反応時間、30m地点の通過時間、フォームなどを計測して、みずからの戦術、イメージと具体的なタイムとを比べて練習しているとのことでした。その時に、興味深かったのは、単に30m通過時間が早い戦術が、「良い」とは判断しない、ということでした。30m時点までの主観的なエネルギーの使い方、身体の疲労度、フォームなども考慮して、総合的に判断するというものでした。主観的な感覚と客観的なデータとを突き合わせながら、最適、最速の戦術を練っていることを示唆してくれました。

 少しの違いを大事にしながら、全体への影響を適切に判断して、自らの動きを決めていく。まさに人智の限りを尽くすアスリートは大きな差を生むことができるのでしょう。
posted by 忠 at 14:56| Comment(0) | 男子陸上部☆部長コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする