2016年04月26日

ジョコビッチの生まれ変わる食事

 既に読まれた方も多いと思いますが、最近、表題の本を読みました。ジョコビッチとは、現在、世界ナンバー1のテニスプレイヤー、ノバク・ジョコビッチです。

 ジョコビッチは、世界トップレベルになったときに大きな壁にぶち当たります。いつもここぞというときに、腹痛をおこしたり、集中力が切れたり。その原因に「グルテン」があったようです。食事改善をおこない、グルテンフリーの食事に代えてから、急激にパフォーマンスが高まり、安定してきて、現在、世界王者に君臨するようになりました。

 我々の身体は、食物がなければ生命を維持することができません。常に新陳代謝を繰り返しながら、各組織は再生されます。同時に、日常生活、身体活動のエネルギーも補給されなければ活動性を維持することはできません。ましてや身体活動、トレーニングを活発に行うアスリートにとっては、食事(栄養)は、パフォーマンス向上のためのトレーニングと同等に重要なものです。

 ただし、頭ではその重要性を意識していても、日常の食生活の具体的な行動につながらないアスリートも多くいます。特に、大学生アスリートの食事は問題が多いと指摘されています。激しい強化合宿中には、きちっとした食事が出るので調子よくなり、合宿からもどり下宿になった途端に調子が悪くなる、という嘆きをコーチから聞くこともあります。「食」は人+良 を組み合わせた字です。是非、自らの身体、パフォーマンスを良くするという意識で、アスリートは食事に取り組んでほしいと願っています。

 ジョコビッチは、食事のルールとして次の4つを挙げています。
@ ゆっくり意識的にたべよ
A 肉体に明確な指示を出せ
B 前向きであれ
C 量ではなく、質を求めよ
今、食べているものがどのように身体に効くのかを意識して食べることを示しています。これはトレーニングと同じです。いまやっているトレーニングが何に効くのかを「意識」して取り組む、という意識性の原則につながります。

 また、この本にはジョコビッチの生まれ育った国が置かれた状況にも書かれています。ジョコビッチは、現在、スロベニア出身ですが、もともとユーゴスラビアという国から分離・独立しています。ヨーロッパにおける民族紛争の激しい地域での経験から、人間としてどのように営むのか、について次のような想いを語っています。

「どこも痛くないときは、小さな石を靴の中に入れて、歩きなさい」
 なぜなら、こういうことをすれば他人の痛みに思いを致すことができるからだ。つまるところ、私たちは地球上にひとりぼっちになるために生まれたわけではない。私たちはお互いから学び、団結してこの星をより住みやすい場所にするために創られたのだ。

 そしてイギリスの宰相チャーチルの言葉、「私たちは得るもので生活するが、与えるものによって人生を形作る」を引用して、つまり周囲の人々に与えれば与えるほど、あなたの魂は大きく成長し、人間としても大きくなれるのだ。と激しい戦闘を経験した人間としての深い洞察を込めています。

 最後に、『自分を制御できる力の大きさが、あなたの人生の質を決める』
 と食事、生活、トレーニング、仕事に通じる感慨深い言葉で結んでいます。

 一読を勧めたい本です。
posted by 忠 at 15:08| Comment(0) | 男子陸上部☆部長コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アスリートの食事

 健康な日常生活を営むには、休養(睡眠)、栄養、運動(健康の3原則)が大切であることはよく知られています。ところが働き盛りの人々はこの3原則を忠実に守れず、「メタボ」や生活習慣病になるリスクを高めている現状があります。
 日常的にハードなトレーニングを行うアスリートにとっても適切な食事は、身体機能の維持・向上に欠くことができません。中高生のときは自宅で家族によるバランスの良い食事をとることができるのですが、大学生で一人暮らしをはじめるとどうしても食事まで気が回らず「お腹を満たす」ことが中心で栄養の偏りが見られるようになります。そうなると、いくらトレーニングを積んでもパフォーマンスが上がらない、疲れがとれないという状況に陥ります。
 テニスの世界トッププレイヤー『ジョコビッチの生まれ変わる食事』によると、彼は食事の改善によって一気にパフォーマンスを高めることができたようです。「食物は情報である」という記述があり、ジョコビッチは食事のルールとして、@ゆっくり意識的にたべよ、A肉体に明確な指示を出せ、B前向きであれ、C量ではなく、質を求めよ、を決めています。身体トレーニングと同様に、「意識性」の原則で食べたものがどのように身体に効くのかを考えて食べなさいということを教えてくれます。もちろん食事は栄養だけでなく、喜びと楽しみの時間ですので楽しみながら、「食物の情報」を身体へ教えるように意識して食事してみて下さい。
posted by 忠 at 15:06| Comment(0) | 【Lakes Magazine】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月10日

特集号 ラン&ウォーク

 冬から暖かい春になると身体が動きやすくなりますね。この機会に是非、ウォーキングやランニングを楽しんでください。今回は、ウォーキングやランニングについて研究室で明らかにしてきた研究成果のいくつかを紹介します。
 二足歩行の人間にとって、歩く・走る速度は、1歩あたりのストライドとピッチのかけ算によって決まります。つまり、早く歩いたり、走ったりするには、ストライドを大きく、ピッチを早く、もしくは両方ともを大きく・早くする必要があります。
 ウォーキングを継続的に行うことで有酸素能力が高まることが知られていて、手軽なエクササイズとして良く用いられています。一方で、高齢者になると歩行能力(速度)が落ちて転倒するリスクが高まるといわれています。特に転倒リスクは足が上がらないことが原因となっており、単に足部のつま先を上げる筋肉の低下だけでなく、太腿を持ち上げる股関節屈曲の筋力低下が原因といわれています。では、日常の中で、どのようにすればこの股関節屈曲に関わる筋力低下を予防できるのかを研究しました。
 歩く速度を同じ(通常歩行速度)にして、普段通りに歩く、ストライドを大きく、ピッチを早くの3条件で比較しました。そうすると、ストライドを大きく歩く条件では、足を前に振り出して接地する局面で股関節屈曲筋(腸腰筋)を積極的に活動させていることが分かりました。つまり、日常の中で、大股で歩くことで普段あまり使われなくて重要な筋(腸腰筋)を鍛えられることが分かりました。
 ただし、大股歩行はエクササイズとしては効果がありますが、日常生活に取り入れるには強度が高くなります。そこで、3歩に1回の大股歩をいれるi-walkという歩き方を研究室で考案し研究しています。こちらは日常生活に自然と取り入れられ、かつ股関節の筋力効果にもつながること、エネルギー消費量も高められ、かつ辛くないことを明らかにしています。少しの工夫で日常歩行をエクササイズに変えられます。
 走るに関するスプリント研究において、短距離選手の足ゆび、筋の形態などから興味深いことが分かってきました。一般の人と比べると短距離選手は、足ゆびを動かす筋肉の発達が顕著でした。短距離を速く走るには、全身で発揮する力を大きくして末端の足ゆびに伝達し、地面からその反力をもらう必要があります。当然、大きな力を伝達できるようになるには、足ゆびの筋力が発達する必要があると考えています。
 また、膝を伸ばす回転力は、太腿の前の筋肉(大腿四頭筋)の筋力と膝関節からのモーメントアーム(テコで習った支点から力点までの距離)によって決まります。トップスプリンターについて調べてみると、筋力の指標である大腿四頭筋の太さ(断面積)ではなく、膝関節からのモーメントアームの方が、スプリントパフォーマンス(疾走能力)と関連することが分かってきました。これらの結果は、MRIを活用した研究で明らかにしてきました。
 ラン&ウォークに関わる研究は非常に興味深く広範囲です。今回は、そのほんの一部を紹介しました。興味ある方は詳しく調べてみてください。
posted by 忠 at 15:55| Comment(2) | 【Lakes Magazine】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする